大阪市北区中津2-3-10 トライスタービル
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院長からのご挨拶の続きはこちら口に摂取された食べ物は、咀しゃくによって食塊形成され、舌によって咽頭(いんとう)に運ばれます。
※咽頭は飲食物の通り道「食道」と空気の通り道「気道」が交わっているところです。
食物がスムーズに咽頭を通って食道に運ばれるためには、咽頭蓋が気管の入口に蓋をし、気道が完全に閉鎖されなければならない。そして普段は閉じている気道の入口が開いて食塊が通過します。この様に摂食嚥下というのは実に複雑なメカニズムの営みなのです。
筋機能、神経の伝達に衰えが出てくると、この摂食嚥下のメカニズムに狂いが生じ、誤嚥しやすくなります。そこで、食事、食材に対する様々な配慮、筋機能を回復するリハビリが必要となってくるのです。
食前の充分なウォーミングアップが誤嚥防止に効果的です。食べる直前に準備体操をしましょう!食事の時に使う筋肉をウォーミングアップしてあげて誤嚥を防ぎましょう。
いきなり症状が改善されるわけではありません。ゆっくり、遠く(横隔膜)から近く(舌)へ向かってほぐしていきます。
全体的に症状を改善させるためにも、麻痺のある部分だけ
重点的に行ってもよいでしょう。
基本的には食前に行い、それ以外の時もどんどんやりましょう。
一人だけ違う食事をとるのはさびしいことですし、作り手も別の食事を作るのは大変です。みじん切りや刻み食、あるいはミキサー食にする前に、まず「家族と同じ食事をとる」ことを基本とし、食品の選び方と調理法を工夫してみましょう。
ごはん … かたさは食べる人の好みに合わせる。むせやすい時には全がゆかやわらかめに炊いたごはん。
もち … のどにつまらせる心配があれば、既製品はやめる。かわりに材料を工夫したもちで試してみる。
パン … 耳がかみ切れなければ取り除く。パサパサして食べづらい時には、スープなどの液体に浸して食べるとよい。
コーンフレークなど … 牛乳に浸してしんなりさせて食べる。
めん類 … すすれない人には5cmくらいに切る。ゆで時間でやわらかさを調節する。
筋の少ないヒレ肉など、加熱しても身がしまらない素材を使う。
薄切り肉を選んだり、切るときには繊維を断つようにする。
調理法はふたをして蒸し焼きにしたり、よく煮込んだりすると、食べやすい。薄切り肉を重ねて作れば、豚カツも無理なく食べられる。むせやすい人にはひき肉を二度挽きにするとよい。
加熱してもやわらかいタイ・アジ・キス・ヒラメ・メバル・カレイ・ムツ・ウナギやアナゴといった魚や刺身の状態は比較的食べやすい。焼く場合は身をほぐしてとろみのあるソースでまとめたり、または煮る。蒸すなどの調理法ならば無理なく食べられる。
豆腐 … むせがひどいときにはくずしながら食べるとか、比較的凝固性の低い寄せ豆腐を選ぶなどの工夫をし、注意して食べる。
枝豆 … 薄皮が口に残るときには、薄皮を除いておくようにする。それでも食べにくいときには、つぶしてペースト状にする。
そのままでも食べやすいが、むせやすい人にはポタージュやババロアなどのような、とろみのある調理方法にする。
卵・卵製品卵は加熱具合でやわらかさを調節する。
固ゆで卵は細かく刻んでマヨネーズやホワイトソースなどであえる。
葉物 … かみ切れないときは葉だけを使う。菜花やかぶの葉などは、みじん切りにすると、口の中に散らばってまとまりにくくなるので、あえ衣であえてまとまりよく飲み込みやすい形にする。
キャベツ … せん切りが食べにくければ、葉をさっとゆがいて端から巻き、小口切りにするとかなり食べやすくなる。
なす・トマト・グリーンピースなど … 皮がかたくてかみ切れないことがあるので、皮をむく。なすは輪切りにして皮をはがしやすくしておくという方法もある。
かぼちゃやにんじん、繊維の多い野菜…繊維を断ち切るように切り目を入れたり、面取り、隠し包丁などをする。時間をかけてやわらかく煮る。
焼き芋 … 湯気でむせることがあるので食べるときに注意する。
じゃが芋・さつま芋 … つぶしたり、煮くずれするくらいに火を通す。煮汁をからめたり、しっとりしたものと組み合わせる。
山芋 … 生では一口サイズに切る。芋をすりおろした“とろろ”はそのまま食べてもよいし、みそ汁でむせるときなどにとろみづけとしても利用できる。小分けして冷凍保存が可能。
果肉がやわらかいくだものは問題ない。すいかは水分が多く、口の中に繊維が残るので飲み込みにくい可能性が高い。いちごやキウイフルーツなどの小さな種は義歯床と上あごの粘膜の間にはさまると相当痛むので、注意が必要。
飲み込みにくい、むせやすい人の多くは、水やお茶などのさらさらした液体でむせます。
こうした液体には、人工的にとろみをつけることで、食べ物をゆっくりとのどに送り込むことができ、その結果飲み込む意識が持てるのでむせにくくなります。
ここでは、その「とろみづけ」のテクニックをご紹介します。
手に入りやすさ、使いやすさでは一番のとろみ剤。現在市販されているものは、主に じゃが芋のでんぷんから作られています。粉を水でといて、とろみをつけたい料理に加えて混ぜ、煮立てて濃度をつけます。
基本配合 … かたくり粉:水=1:1 ※要加熱
適合料理 … 和洋中問わず
とうもろこしのでんぷんで、お菓子などにもよく使われます。粉を水でといて料理に加え、煮つめて濃度をつけます。
基本配合 … コーンスターチ:水=1:1 ※要加熱
適合料理 … おもに洋風、お菓子など
介護食品を扱っているところでいろいろなとろみ剤が販売されています。そのまま料理に加え混ぜてとろみづけができるので携帯して必要に応じて使うことができます。
基本配合 … 商品により異なる ※調理過程での水どき・加熱が不要
適合料理 … 和洋中・菓子など用途は広い
-ごはん・パン・めん類を煮込む-
ここで紹介したとろみづけの材料のほとんどがでんぷん質です。ごはんやパン、めん類なども煮込むことによってでんぷん質が分解されてとけ出し、汁にとろみがつきます。
お粥、雑炊、煮込みうどんやミネストローネなどは、こうしたでんぷん質の食品を使うのでとろみ剤を加えなくてもとろみがつき、飲み込みやすくすることができます。
-山芋をすりおろす-
“とろろ”はなめらかで粘りがあるうえ、味が淡白なのでさまざまな料理に使うことができます。
冷たいお菓子や料理によく使われます。寒天に比べて粘度が高く口の中でとけやすいので、飲み込みにくい人に適しています。
基本的には水でふやかした煮とかしゼラチンを料理に加え混ぜ、冷やし固めます。粉のまま液体にふり込んで煮ればよいものもあるので、使い方を確認してください。
基本配合 … 水100ml当たり3g程度
適合料理 … 寄せ物、冷やして食べるお菓子など
フランス料理などでよく使われる。バターの風味を生かしたクリーミーな仕上がりにしたい時に最適です。鍋にバターを溶かしたところに小麦粉を加え混ぜ、料理に加えてとろみづけに用います。
基本配合 … 小麦粉:バター=1:1 要加熱
適合料理 … おもに洋風
摂食・嚥下訓練には、大きく分けて間接訓練と直接訓練があります。
間接訓練とは食べ物を使わない訓練を、直接訓練は食べ物を使う訓練をさします。
もちろん直接訓練は、食べ物や食べ方を規定すれば安全に飲み込める機能があると判断された患者さんに対してのみ行います。
直接訓練とは食べ物を使う訓練を指し、大きく段階的摂食訓練と嚥下代償法にわけられます。
直接訓練の適応は、VFなどの検査によって何らかの工夫をすれば安全に食べられると判断された患者さんのみに限られます。
その“何らかの工夫”が嚥下代償法と呼ばれるもので、食べ物や食べ方の段階を徐々に上げていくことを、段階的摂食訓練と呼びます。
誤嚥防止の代償法として、最もよく使われるのがリクライニングです。
気管が前、食道が後ろにあることから、口から直接気管内に食べ物が入るのを防ぐ目的でリクライニングをさせます。この際、首が伸びて上を向いてしまわないように必ず枕を入れるようにします。
なお、個人にあった角度は検査によって決める必要がありますが、介助を要しないで食べられる角度はだいたい60度以上です。
頸部の位置をかえる嚥下代償法は、数多くあります。頸部前屈も誤嚥防止として用いられるもので、最も一般的なものの一つです。
口頭蓋谷が広くなる、咽頭と気道に角度がつく、嚥下反射が誘発されやすいなど、さまざまな効果が報告されています。
食塊のとおり方に、左右差がある場合に用います。
たとえば、VFの正面像で検査したときに、食塊は右の梨状窩のみをとおり左は通過が不良で梨状窩に残留するとします。その場合には、基本的に患側である左側を向いて嚥下させます。
これにより患側の咽頭腔が狭められ、健側のみを食塊が通るようになります。直接訓練開始時点で用いることが多い代償法です。
飲み込みに併せて下を向くように努力性に嚥下させる方法です。咽頭残留が多い場合などに試すとよいでしょう。
しかし、嚥下に努力が必要な患者は自然とこのような動きが出ている場合が多くあります。
口腔期の送り込みは非常に悪いものの、咽頭には大きな問題がない場合に用います。
口から咽頭へ食塊を送り込む際に上を向いて重力で食塊を咽頭に落とし、その後、下を向いて嚥下させます。上を向かせることで誤嚥の危険性は高くなるので、咽頭に大きな問題が認められない場合のみに用いるべきです。
頸部回旋のみでは効果が不十分である場合や、口腔の送り込み不良と咽頭通過の左右差が同時に見られる場合に用います。
think swallowは失調や認知症(痴呆)などによる嚥下のタイミングのずれが誤嚥につながっている場合、effortful swallowは嚥下後の残留が認められる場合に用います。
しかし、方法にほとんど違いはなく、嚥下を意識化して力強く飲ませるのがこの二つの手法です。
嚥下後に残留が認められるものの、残留の感覚が乏しい場合に複数回嚥下をするように指示します。反復嚥下ともいいます。
また、咽頭残留をゼリーにて流し込むなど、異なる食形態のものを用いて咽頭残留を除去する場合は交互嚥下といいます。
誤嚥の危険性が高く、更に不顕性誤嚥が疑われる場合に用います。
嚥下後に発声させて湿性嗄声(がらがら声)が認められる場合には咳払いを促します。
声門越え嚥下ともいいます。誤嚥防止を目的に用いるもので、嚥下と呼吸の安全な強調パターンの獲得が目的です。
嚥下前に息をこらえさせることにより、声門閉鎖を確実にし嚥下後に強く息を吐かせることで気道に入りかけた食塊を気道から排出します。「大きく息を吸って、息を止めて、飲み込んで、勢いよく息を吐く」と指示します。
最初からこのパターンをうまくできない場合には、「深呼吸→深呼吸の際に一旦息を止めてから吐く→深呼吸の際に一旦息を止めてから飲み込んで吐く→深呼吸の際に一旦息を止めてから飲み込んで、勢いよく吐く」のようにすすめるとよいでしょう。
嚥下の代償法として歯科補綴装置(入れ歯のようなもの)を用いる場合があります。これを嚥下補助床といいますが、舌接触補助床(palatal augmentation prosthesis=PAP)と軟口蓋挙上装置(palatal lift prosthesis=PLP)に大きく分けられます。
PAPは舌の運動障害を代償するための装置で、舌の動きが相当に悪く、舌と口蓋が接触しない場合に用います。入れ歯のような装置の床(上あごの部分)を普通の入れ歯よりも厚くすることにより、嚥下時の舌と口蓋との接触を補助し、摂食時の食塊の移動やコントロール、および口腔における食塊の送り込み効率の向上を期待します。この装置を用いることで咽頭にもよい影響が出たとの報告もあります。
PLPは軟口蓋の挙上が悪いために鼻腔閉鎖不全が認められる患者に対して用いられる装置で、装置の上あごの部分から後方に挙上子(ボタン状のプラスチックの板)を延長して作ります。そしてこの挙上子により作為的に軟口蓋を持ち上げて、構音時、嚥下時の鼻咽腔の閉鎖を図ります。この装置の目的は構音機能の改善が主であるため、言語聴覚土と歯科医師の協力体制は不可欠となります。
重症例から軽症例まで、すべての摂食・嚥下障害の患者さんがその適応となります。しかしながら、すべての症例が適応であれば何をいつまで行えばよいのかということも考える必要が出てくるでしょう。
訓練により状態が改善してきた場合には、リラクセーション的な訓練は継続とし、依然として機能が不十分であると判断される部分があれば、その他の特異的な訓練を併せて継続するのがよいと思われます。
唇や頬が固くて閉じない場合、またそれが原因で唾液が口から流れ出てしまう場合などに用います。
唇は、指を巻き込んで内側に伸ばすのがコツです。頬は、内から外へと伸ばします。
また、このようなマッサージを必要とする場合には、口腔周囲を使っていない(食べたり話したりする機会がほとんどない)ことが多く、口腔乾燥も同時にみられる場合がよくあります。
その際には、マッサージを行って口唇や頬を伸ばすとともに、刺激で唾液の分泌を促します。
ある程度自分で舌や口唇を動かせるけれども動く範囲が少ないという場合には、可動域訓練を行います。
図のように舌や口腔周囲を各方向に対して最大限に動かします。
舌がよく動かない場合には、ガ-ゼで舌をつかんで(強くつかむと痛みのため舌が緊張するので弱い力で把持する)、前に引き出すようにします。
この際、微妙に振動をかけながら引き出すと、行いやすくなります。
おもに、舌や口腔周囲をある程度動かせるけれど特定の方向の動きが弱い、という場合に用います。舌の筋力負荷訓練には、押し付けたスプーンを舌で押し返してもらうように、口唇の筋力訓練はストローやボタンに紐をつけたものをくわえさせて引く力に抵抗させるように、頬の筋力訓練は頬を膨らませて指で圧迫し、口から息がもれないように抵抗させて行います。頬の筋力訓練は、鼻咽腔閉鎖の訓練にもなります。
またOLA-lightR2)パタカラR3)などの訓練器具もいくつか市販されるようになりました。これらの器具を用いなくても訓練は行えますが、患者や家族に訓練の方法や目的を理解しやすくし、またそれぞれの訓練に“遊び”的な要素があるため続けやすいという利点があります。
同じ器官を用いることから。嚥下訓練には構音訓練も利用します。よく「パタカ」といいますが、「パ」は口唇が閉じる、「夕」は舌の前方が口蓋と接する、「力」は舌の後方が口蓋と接することによってできる音です。これらのうち、うまく発音できない音を訓練します。まずは“パ”などの単音をいわせ続いて“パパパ”や“カカ力”の単音の繰り返し、さらに“パタカパタカ”の単語、最後は文章をいわせるという流れで行います。いずれも鼻咽腔閉鎖の訓練にも利用できます。
主として、声が鼻から抜ける場合や食べ物が鼻から漏れる場合などに用いる訓練です。
水をはったコップをストローで吹く、笛を吹く、などの方法で行います。
もちろん唇が閉じなければうまく吹けないので口唇閉鎖の訓練にもなります。この際、吹き続けた時間を測定しておくことで次回訓練の際の目標設定が行いやすくなります。また、鼻から吸って口をすぼめて吐くことで口すぼめ呼吸としての意味合いを持たせ、肺機能の強化を期待することも可能となります。
リラクセーション(嚥下体操)は、どちらかというと“訓練”という積極的な意味合いよりも、ある程度の機能が保たれている方に対しての“準備体操”的な意味合いで用いられることが多いものです。嚥下に関連する筋肉を一とおり動かすために、食べる前の準備体操として用いるのが効果的です。
同じ器官を用いることから。嚥下訓練には構音訓練も利用します。
よく「パタカ」といいますが、「パ」は口唇が閉じる、「夕」は舌の前方が口蓋と接する、「力」は舌の後方が口蓋と接することによってできる音です。これらのうち、うまく発音できない音を訓練します。
まずは“パ”などの単音をいわせ続いて“パパパ”や“カカ力”の単音の繰り返し、さらに“パタカパタカ”の単語、最後は文章をいわせるという流れで行います。いずれも鼻咽腔閉鎖の訓練にも利用できます。
嚥下訓練として最も有名なものが、この訓練法ではないでしょうか。アイスマッサージともいいます。
冷たい刺激で嚥下反射を誘発させるのが、この訓練の目的です。綿棒に冷水をつけてもよいのですが、水をつけた綿棒を事前に凍らせておいて使用してもかまいません。
また、過去の文献では刺激する場所は前口蓋弓とされていましたが、嘔吐反射がない限り刺激する場所にはあまりこだわる必要はありません。最初はどこを刺激したらうまく嚥下反射が起こるか、探るようなつもりで行うのがよいでしょう。
もっとも、この訓練の効果には最近では異論もあるようですが、安全で簡便であることから依然として最も頻用されている訓練であると思います。直接訓練やVFを行う前の準備運動的に行う場合もあります。
目的は(7)のPushingExerciseと同じで、声帯の閉鎖機能の改善です。ただし、この訓練は反回神経麻痺などで声帯の動きに左右の差がある場合に用います。患側(動きの悪いほう)ののど仏を健側(動きのよいほう)に圧迫したまま発声させます。
仮性球麻痺患者に対して有用であるとされているのが、このK-Point刺激法です。
臼後三角最後部やや後方の内側を圧刺激すると、開口反射咀嚼様運動に続いて嚥下反射が誘発されるとされています。
嚥下訓練としては嚥下反射誘発目的で行いますが、口腔ケアを行う際になかなか口を開いてくれないような場合に試してみてもよいでしょう。
嚥下反射がなかなか起こらない患者さんに対して行います。
のど仏を左右から上方に摩擦刺激することで、嚥下筋群への知覚入力により嚥下反射を誘発させるのが目的です。どちらかというと、間接訓練というよりも実際食べている場面でなかなか飲み込みが起こらないときによく使用します。
嚥下反射促通手技を行い、嚥下反射が起こると喉頭が挙上します。このときに咽頭が最大限に持ち上がっている状態を保たせることにより、食道の入り口を開くのがMendelsohn手技の目的です。
患者さんに指導する際には舌を口蓋に強く押し付けるようにと指導すると比較的わかりやすいとされています。しかし、実際に自分で行ってみると非常に難しいのがわかると思います。どうしても行えない場合にはこれに固執せず他の食道入口部開大訓練を用いるほうがよいと思います。
頭部挙上訓練ともいいます、咽頭挙上筋群を鍛えることにより、食堂入口部の開きを改善するのが目的です。原法では頭を持ち上げたまま1分間持続というタスクになっていますが、実際にはこれを行える患者さんはほとんどいません。そこで、頭を持ち上げて下げるというだけの変法を行う場合がほとんどです。また、完全な臥位で行えない場合には、ギャッジをあげることにより負荷を下げてあげるのも方法です。
食道入口部の開きが非常に悪い場合には、有用な訓練です。尿道用のバルーンカテーテルを経口的に挿入してもらい、食道の入り口をストレッチします。方法は5通りあるといわれています。もちろん、嘔吐反射が強い症例に対しては、行いづらい方法です。必ず専門家の指導を必要とする訓練であるため、詳細は他書にゆずりますが、脳血管障害の患者さんだけでなく口腔咽頭腫瘍術後の食道入口部開大不全にも有用な訓練です。
咳がうまくできない場合には、咳嗽訓練を行います。
最初から「咳をしてください」と指示しても多くの場合はうまくいきません。この場合、「深呼吸→深呼吸の際に一旦息を止めてから吐く→深呼吸の際に一旦息を止めてから咳をする」のように段階的に行わせるほうがよいでしょう。
また、副次的な効果として腹筋群、声門閉鎖、鼻咽腔閉鎖機能の強化も期待できます。
嚥下訓練の一環として用いる呼吸訓練には、ブローイング、pushing exercise、咳嗽訓練も含まれますが、それらは既述のため割愛し、ここでは腹式呼吸のみ説明します。
リラクセーション、気道分泌物の誘導排出の促進、咳嗽時に必要十分な吸気量の確保、呼吸の随意的コントロールなどを目的として行います。吸気は鼻から、呼気は口すぼめにより口から行わせます。うまく腹式呼吸ができないときには、手を腹部において呼気時に軽く圧迫を加え、吸気時に圧迫を開放することで腹式呼吸を促します。
痰や誤嚥物がうまく出せない場合には、排痰法を行います。おもなものには、体位ドレナージ、スクイージング、ハフィングがあげられます。
気道分泌物や誤嚥物がどこにあるのかを聴診にて決定し、その部位の気管支が垂直に位置するようにドレナージ体位をとらせます。この際、同時にスクイージングをかけると効果的です。スクイージングは、分泌物がたまっている部位を呼気と同期して圧迫することにより、呼気の流速を高めて分泌物を押し出します。さらに分泌物が上気道まで出てきたら、ハフィングや咳嗽を行わせて喀出または吸引します。